■法人向けのノートについて
法人向けのパソコンでノートとなるとデスクトップ以上に多岐にわたる使用方法が考えられます。
使用方法でのポイントは、やはり「どれくらい持ち歩くか」ということでしょう。
社内でのみ持ち歩くのか、外にまで持ち出すのか、デスクトップの代用品としてほとんど据え置きということも考えられます。
ノートパソコンで、個人と法人で大きく違うのは、グラフィック性能が必要かどうかの点です。
法人ではほとんど3D性能を必要としないため、単体のGPUは必要なく、このため大型ノートでも小型ノートでもそこまで性能に差は付きません。
デスクトップと同様にあまり個々の性能は重視されず、必要な社員に必要数行き渡らせるということがほとんどでしょう。
パソコンに性能を求める場合は、デスクトップが導入されるでしょうし、ノートはその補助的なサブマシンとして導入されるという事例は少なくありません。
性能よりもむしろ重視されるのは、堅牢性やデータのセキュリティなどです。
データ流出の危険性は個人より法人の方が遥かに高く、さらにノートはデスクトップよりもデータ流出の危険性が高いため、セキュリティはかなり重要です。
保証に関してはどれくらい意識するか、少し微妙な要素です。
法人向けでは標準で長めの保証がついていたり、追加オプションが用意されているメーカーがありますが、導入台数によって重要度は変わってきます。
導入台数が多ければ、数が多い分だけ故障する可能性は高くなりますが、追加料金の保証などは台数分かかるためかなり追加コストがかさみます。
それに台数が多い場合は、1台や2台故障したところで、他の部署のパソコンなどを融通することもできるでしょう。
逆に台数が少ない場合は1台故障したら業務に支障をきたすので、追加保証などを利用して素早く修理できる体制を整えておいたほうが無難です。
■社内用ノート、持ち歩く場合
社内でのみ使い、会議室や他部署に持ち歩くノートパソコンというのも便利なものです。
行く先々にデスクトップパソコンが用意してあったとしても、いつも同じ環境で使用できる自分専用の1台があった方が使いやすいでしょう。
特別作業をしない限りはさほど性能も必要ありませんが、大きさは15型ぐらいが使い勝手が良く、持ち歩くにも適当で机の上で使うには作業をしやすい大きさです。
社内だけなら17型でもそれほど持ち歩くのに苦になりません。
さほど性能は必要ないとはいっても、部署や役職によっては作業量の差はあるでしょうから、それに合わせて高性能なモデルを数台導入するのも良いでしょう。
最初の説明とは反しますが、こういう用途では各人に1台でなくとも、部署毎に何台という導入も悪くありません、普段はデスクトップを使い、会議などの際に部署専用のノートを持ち出して使うという用法です。
この場合必要なデータはサーバーに保存し、どのパソコンでも同じデータを参照できるようにしておくと便利です。
こういった用途でのオススメモデルをいくつか取り上げると
・富士通 LIFEBOOK E
・DELL Vostroシリーズ
・マウスコンピューター MousePro NBシリーズ
富士通のパソコンは家庭用ではマルチメディア向きのFMVのイメージが強いのですが、法人向けのノートはイメージががらりと異なるパソコンです。
法人向けパソコンで重要なセキュリティ機能が強く、安心感が違います。
Eシリーズで非常に面白いのが、キーボードが選択できる点で、日本語入力に特化した「親指シフト」キーボードがオプションで選択できます。
親指シフトは富士通ならではの技術で、ローマ字入力やかな入力よりも高速で日本語入力可能な入力方式です、独自の操作法なので習得には訓練が必要ですが、熟練者ならば速記並の高速入力が可能です。
DELLのVostroは法人向けモデルの中でも低コストモデルとしてラインナップされており、かなりの低コストで導入可能です、サポート面や堅牢性はあまり期待できないので、大量導入で数を揃えて使う場合に有用です。
マウスコンピューターの法人向けモデルは、低価格からあり、こちらも一括導入に向いていますが、少ない台数の場合にはオプション保証が充実しているのもポイントです。
数台程度の導入ならば全てに3年保証を追加しておくといいでしょう。
■社内用ノート、据え置きで使う場合
社内で据え置き型のノートを使うのならば、素直にデスクトップを導入する方がなにかと都合がいいのですが、社内の設備が古くオフィスの配線や設置する机等がパソコンに最適化されていない場合はデスクトップを設置し辛く、ノートの方が設置に便利なこともあります。
例えば、配線はデスクトップでは最低でも本体とモニタの電源ケーブル、モニタとの接続ケーブルが必須で、LANケーブルにマウスとキーボードの線が加わります、台数が増えるとコンセントのタコ足配線にケーブルだらけになります。
オフィス全体がIT化されていれば、LANケーブルは床下や天井に張り巡らせ、コンセントはコンセントボックスに収め、パソコンデスクはモニタ等の配線を収納できます。
これらのIT化がされていない場合は、コンセントはACアダプタだけで済み、無線LANでネットワークに接続できるノートの方が便利です。
一人あたり2台のパソコンを使うような場合でも、1台はノートの方が便利なことも少なくありません。
パソコンを使わない作業の場合にすぐに片付けられるノートは便利ですし、いざという時すぐに移動させることもできます。
こういった利点のある据え置きノートでは、当然ですが大きいほどデスクトップの代わりとしては便利で、17型、15型といった大きさが欲しくなります。
性能は用途によりますが、高性能が必要な用途なら、配線などの問題を抱えていてもデスクトップを導入するべきでしょうから、そこまでの高性能は必要になることはほとんどないといえます。
そこそこ快適に動作する性能があればそれで充分でしょう。
強いていえば事務作業では数字入力が多くなるので、テンキーが搭載されたキーボードが便利でしょう、もっとも、据え置き使用ならキーボードやテンキーをUSBで接続して使ってもいいでしょう。
こういった用途のオススメモデルは
・SONY 法人向けVAIO Eシリーズ
・ドスパラ Prime Note Criteaシリーズ
・マウスコンピューター MousePro NBシリーズ
これらの17型、15型モデルがオススメです。
SONYのVAIO Eは法人向けで標準で3年間の保証があるのがかなりの強みといえます。
大きさのバリエーション豊富で15型、17型ともに便利です。
ドスパラのCriteaは特に法人向けというわけではありませんが、カスタマイズの幅が広く、安価で性能を確保しやすいという利点があります、性能を確保した上での1台あたりの調達価格ではかなり優れています。
マウスコンピューターのMousePro NBは前述の持ち運ぶ場合で紹介したモデルと同じです。
設置として使う場合も優秀です。
こういったモデルが据え置き型では便利でしょう。
ひとつ注意点として、ノートを無線LANで使う場合は当然ですが無線のセキュリティ強化が必須です。
■モバイル用のノート
営業の外回りや出張などで、社外にパソコンを持ち出す、モバイル用途も法人では重要なパソコンの役割です。
こういった用途では、衝撃で故障しない頑丈さの堅牢性、持ち歩くのが苦にならない大きさ重量とバッテリー駆動時間の携帯性、データの流出を防ぐセキュリティ、これらの要素が重要となります。
性能に関しては、あるに越したことはないという程度で、よほど動作が遅くない限りは問題ないでしょう、そもそも外でそこまで動作が重い作業をすることはほとんどありません。
こういった用途では、14型以下の大きさが主流となります。
軽量でバッテリー駆動時間もあれば15型ぐらいでも問題ありませんが、堅牢性と携帯性を両立している15型はそこまで数が多くありません。
セキュリティのポイントは、指紋認証などの生体認証が定番で、この他独自のセキュリティ機能を搭載している製品も多くあります。
外で使うものは、社内で使うものに比べると、紛失や盗難の危険が高く、仮に紛失しても他人に使用できないようにする対策が必要です。
法人ではパソコンそのものよりも、中に入ったデータの方が重要で、それらが流出する方がパソコンが1台なくなることよりも遥かに被害が大きく、セキュリティはかなり重要です。
いくつかセキュリティが強いモバイルパソコンを紹介すると
・レノボ ThinkPad Xシリーズ
・NEC VersaPro UltraLiteシリーズ
・パナソニック Let'snoteシリーズ
ThinkPad XはThinkPadシリーズの中で、携帯性に特化したモデルで、堅牢性、携帯性、セキュリティと三拍子そろった強力なモデルです。
セキュリティは強力で、障害が発生した際に復旧する機能も強力です。
NECのVersaPro UltraLiteはビジネス向けのモバイルノートで、強力なセキュリティ機能があり、HDD自体に暗号化をほどこしてデータの流出を防ぎ、盗難された際の遠隔操作でデータを消去するという機能もあります。
パナソニックのLet's noteは15型からビジネスのモバイル用途に耐えうる製品がラインナップされており、大きめのビジネスノートが欲しい場合は有力な選択肢です。
パナソニックではさらに法人向けで頑丈なTOUGHBOOKシリーズもラインナップされており、携帯性は少し犠牲になりますが、堅牢性はモバイルノートでも最高峰の頑丈さを誇ります。
こういったノートは少々価格は高いですが、もしもの時を考えると当然の投資ともいえます。
セキュリティはしっかりと保ち、頑丈で持ち歩きやすいことが大切です。
■ソフトウェアのコストカット
法人でのソフトウェアの導入は、台数が増えるとかなりの金額になりますが、いろいろと節約する方法もあります。
例えば、ボリュームライセンス契約などのまとめ買いの方法。
WindowsOSやMS Officeなどのマイクロソフト製品は台数が多い場合はボリュームライセンスでまとめ買いして、本体をOS抜きで購入するという方法があります。
セキュリティソフトなどもまとめ買いできる製品があるので、1台1台追加して購入するより、まとめてライセンスを購入してしまう方が安くあがります。
この他、公共機関や教育機関、医療機関では特別価格のライセンスなどもあるので業種によってはこういった優待価格を利用することもできます。
最近注目を集めているのが、オフィスソフトのコストカットで低価格なMS Office互換のオフィスソフトを使う方法です。
フリーソフトのLibre OfficeとApache Open Officeは非常に高機能なOfficeソフトで、近年では官公庁や地方自治体で採用されてパソコン導入のコストカットで実績があります。
この他、MS Officeとの互換性の強さをうりにしている低価格なKingsoft Officeなどもあります。
Windows以外にLinuxOSを使う方法もあり、一部のLinuxOSは無料で使えて業務でも問題ないレベルの信頼性を実現していることもあります。
LinuxOS+Libre Officeの組み合わせは1台あたり数万円のコストカットが見込め、全社で統一できるのであれば、互換性の問題などもなくかなりの成果をあげられます。
ただし、デスクトップよりノートの方が、WindowsOS以外でのデバイスドライバ等の部分で問題が発生しやすいので、こういったLinuxなどを使う場合は、まず1台先行導入して問題ないか評価してから大量導入し本格稼動という方法がいいでしょう。
元々業務では専用ソフトを開発して使うことも多いので、Linux用のソフトを開発してくれるソフトウェア開発会社が見つかればWindowsにこだわる必要もなく、家庭ほどWindowsに頼らなくても問題ない場合も多いようです。
■まとめ
法人でノートパソコンを使う場合は、持ち歩く頻度に合わせたサイズと、セキュリティが大切です。
据え置き用途で外部の人間が出入りしない環境ならば、そこまでセキュリティは必要ないでしょうが、人の出入りが多かったり、外へ持ち出すことが多いのであれば、強固なセキュリティが必要となります。
デスクトップと違い、動かすことも多いので、しっかりと管理体制を整えて、どこで管理すべきノートなのか1台1台把握しておくことも重要です。
ノートに限らず、デスクトップでもそうなのですが、大量導入の場合はソフトウェアを低価格なものに変更して1台あたりのコストカットすることも考えておくのも悪くありません。
もちろん、事前に問題ないかしっかり評価した上での導入が大切です。
性能に関しては、デスクトップよりも低くなりがちなので、あくまでデスクトップの補助やモバイル用として割り切ることも肝心です。
デスクトップの代用となる高性能なノートを求めようとすると、同等性能デスクトップ1台と低価格なノート1台分の価格になってしまうこともありえるので、どういった意図でノートを購入するのかしっかり検討してから導入しましょう。