日本人がパソコンを使う上でもっとも重要なことは何でしょう?
答えは「日本語を入力できること」です。
何を当たり前なことを思われるかもしれませんが、パソコンのOSはWindowsに限らず元々はほとんどが英語圏で開発され、英語を使うようにできているため、日本語を扱うための特別な仕組みが必要なのです。
Windowsの場合は、これを「Microsoft IME」(以下MS-IME)というソフトで実装しています。
日本語版Windowsに元から入っていて、日本語入力をしてくれるソフトなのですが、何も考えずに使っているソフトでもあります。
この「IME」という種類のソフトは何種類もあり、今は標準搭載となっているMS-IMEの地位を脅かすソフトが登場しています。
今回はこんなIMEの話とオススメのお話です。
Googleが強力なフリーソフトのIMEをリリースして状況一変!
まず、最初にIMEの生態系を一変させるきっかけとなったソフトをご紹介します。
それは、GoogleがリリースしたIMEの「Google日本語入力」です。
高い変換精度と予測変換の優秀さ、そして非常に容量が少ない軽量ソフトでもあります。
軽量でありながら高い性能を誇るのはGoogleならではのヒミツがあります。
Googleといえば、検索エンジン、皆さんも頻繁に利用していると思いますが、このGoogle検索では、うろ覚えな語句やスペルミスしたときに「もしかしてこれを調べたい?」という候補を表示する「もしかして機能」が便利です。
その便利な「もしかして機能」を日本語入力に応用したのがGoogle日本語入力なのです。
インターネットから膨大なGoogleのデータを利用して高い変換精度と予測変換を実現しています。
また、ネット上のデータを得ていることから、ソフト自体は軽量となっている訳です。
また、ネット上からデータを得ているということで、芸能人の名前などの固有名詞はもちろん、流行している言葉などは予測変換で候補に上がり簡単に変換できます。
このようにGoogleならではの強みを活かしているのがGoogle日本語入力なのです。
インストールは簡単
さすがはGoogleといった感じで、インストールは非常に簡単です。
あらためて図解することもない気がしますがダウンロードとインストールを説明します。
先に言っておくと、説明するまでもないほど簡単です。
Windows版をダウンロードをクリック。
見ての通り、MacOS版とAndroid版も同様にダウンロードできます。
利用規約を読み「同意してダウンロード」をクリックするとインストールソフトがダウンロードされます。
ダウンロードしたソフトを実行すれば後は自動的にインストールされます。
目立つオプションは標準ではチェックが外れています。
後からオンにもできますので、チェックは外したままで問題ありません。
オプション、Googleに情報を送信することの詳細
このオプションにチェックを入れると、
- OSのバージョン
- カスタマイズの設定
- 打鍵数
- 障害発生時のクラッシュレポート
がgoogleに自動送信されます。
どんな文字や単語を入力したかなどの個人情報は送信されないとされています。
どういった情報を送信して、明言されているかは当然のことですし、標準でオフになっているのは安心ですね。
実はこれには、他のIMEで起こった問題が関係していますが、その話はBaibu IMEの紹介で軽く触れます。
とりあえずは、Google日本語入力はこの点では安心だということ、気になる人はオプションを外したままにしておけばいいという点を覚えておけば大丈夫です。
IMEの切り替え
インストール後はIMEは標準でインストールされているMS-IME(もしくはOffice-IME)とGoogle日本語入力が一緒にインストールされていることになります。
IMEはショートカットキーの「Ctrl」+「Shift」で切り替えるか、言語バーから切り替えます。
切り替えも簡単なので複数インストールしておいて切り替えるという使い方もオススメです。
ちなみに、管理人はほとんどGoogle日本語入力のみを使っていますが、古くからプレイしているネットゲームがMS-IMEのみの対応だったので、そのゲームをプレイするときだけ切り替えています。
ちなみに、「Ctrl」+「Shift」+αというショートカットキーは色んなソフトで使われているので、いちいちIMEが切り替わってめんどうだという場合も、Google日本語入力のプロパティから無効に設定できます。
Google日本語入力側で設定しておけば、MS-IMEを使っているときでもこのショートカットキーは無効になります。
よく考えてみると結構特殊な日本語入力
パソコンは英語圏で発達しました。
もっとも、文化の中心は英語圏で英語以外を母国語や公用語にしている国でも英語は使われていた訳ですが、歴史のお話はさておき、そんな英語で育ったパソコンで日本語入力をするという話です。
日本人なら何気なく行っている日本語入力。
しかし、冷静にその方法を見てみると、かなり特殊な作業をしていると思います。
まずローマ字入力、もう体に染み込んでいる入力方法なので、喋るより速く文字を入力していますが
「にほんごにゅりょく」と打とうとすると「nihonngonyuuryoku」とほとんど無意識に指が動いているということです。
この時点で改めて考えるとすごいことですが、「nihonngonyuuryoku」が「にほんごにゅりょく」となり「日本語入力」と変換されるというメカニズムはホントすごいことです。
英語ならば「Japanese Input」とそのまま文字を書かれたキーを順番に押すだけですが、日本語で入力しようと思うと、こんなにややこしいことをしているのです。
そして、そのややこしい作業をやってくれるソフトがIMEなのです。
他の言語でのIME
日本語を中心に話していますが、英語以外、要するに変換が必要な中国語(と色んな字体)や韓国語にも同じように対応するためのソフトです。
中国語入力や韓国語入力のことはよく知りませんが、これらは文字の部首を組み合わせて文字を入力するそうです。
日本語入力もややこしいと言いましたが、仕組みを聞いてみると中国語や韓国語も入力がややこしいですね。
時代によって賢かったりおバカだったりするMS-IME
代表的なIMEであるMS-IMEはWindowsが全世界に広がる前から、英語以外の言語入力をするためのソフトととしてWindowsに付属しています。
MS-IMEはWindowsやMSOfficeのバージョンアップと共に、IMEも新しいバージョンがリリースされ、進化しています…が、評判はまちまちです。
評判というと、多くは変換精度の問題です。
また、変換エンジンなどが変更されたり新機能が悪い方に働いたりして使い勝手の変化も原因です。
OSをバージョンアップしたら、日本語変換がなんだか違和感がある。
というのは、経験した人も多いのではないでしょうか?
特に、2007〜2008年頃はWindowsVista自体の評判が芳しくなかったこともあって、かなり低評価でした。
もっとも、WindowsVista抜きにしてもあの世代のMS-IMEはなんだか違和感ありましたが。
これからもMS-IMEは進化を続けていくでしょう、でも、これからもずっとこんな評価が続くのではないかと予想します。
IMEの賢さ
最近の若い人は聞いたことが無いと思いますが、大昔にパソコンというかワープロでは賢さを図る呪文がありました。
それは
「貴社の記者は汽車で帰社した」
という早口言葉のような言葉です、「記者が汽車で貴社に帰社した」派の人も居るかも知れませんね。
大して変わらないんでどっちでもいいのですが「きしゃ」という言葉が連続した文でどれも別の単語です。
これをきちんと変換できれば賢いパソコンだという大雑把な判断基準です。
実際に信用度はどれくらいかというと、まったくアテになりません、「食べられるキノコは縦に裂ける」ぐらいの信用度です。
実際に「貴社の記者は汽車で帰社した」をやってみた
Google日本語入力とWindows7環境のMS-IMEで試しにやってみました。
とりあえず、変換履歴を削除してまっさらな状態で入力して変換という手順です。
Google日本語入力
貴社の記者は汽車で帰社した
「きしゃのき」まで入力したところで予測変換に出てきました。
有名だから普通に固有名詞とかことわざのノリで候補に出てくるようです。
MS-IME
貴社の記者は汽車で帰社した
普通に変換できました、ただ、こっちも普通に対策されてて変換できるようになっているだけかも。
試しに「記者が汽車で貴社に帰社した」もやってみた
Google日本語入力
記者が記者で記者に帰社した
なんだろう、この俺がお前でお前が俺でみたいな感じの文章は。
履歴は削除して試してみましたが、同じ単語の変換が優先的に履歴に出てくるのかもしれませんね。
もしくは、インターネットから情報を得ているのなら、世間では「記者」が一番よく使われているのかもしれません。
MS-IME
記者が汽車で帰社に帰社した
惜しい!
いい線まで行きましたがあと一歩でしたね、でも一箇所間違った「帰社に」って部分がなんでこうなったっていう気はします。
「帰社に」って、あんまり使わないでしょう「記者に」とか「貴社に」とかならよく使うと思いますがなんでだろう。
話がかなり横道に逸れたので、軌道修正しますが。
この結果からも、この文の変換があんまりアテにならないということはなんとなく理解できるかと思います。
でも、うちの母親、もとい50代、60代の人って未だにこの文章がパソコンの賢さを図れると思ってるんですよね。
他のIMEはどんなものが?
Windows標準のMS-IMEとGoogle日本語入力以外にもIMEはあります。
と言っても現役で手に入るものは、そんなに数はありませんが、ジャストシステムのATOKは強力なIMEとなっています。
あと、流星のごとく現れ悪い意味でニュースになったIMEもあります。
ジャストシステム ATOK
ATOK(エイトック)日本のワープロユーザーを支え続けた一太郎の日本語入力環境であるソフトです。
一太郎というと「懐かしい!」という人も結構居ますが今でも現役国産のワープロソフトです。
ATOKは一太郎の日本語環境から派生し、現在も付属のソフトですが、単品でも販売されていて今でも根強い人気があります。
前述の通り、MS-IMEは世代によっては評判が悪い時も少なからずあったため、第二の選択肢としてよく持ち上がったソフトですね。
もっとも長らく第三の選択肢が無かったため対抗馬として持ち上げられていたという実情もありますが、標準でMS-IMEというソフトがあるにも関わらず売れているということです。
ちなみに、BCN AWARDで17年連続、FEPソフト(日本語入力ソフト)No.1を受賞しています。
まさに敵なしといった感じで、最近ではほんとに敵が居なかったのですが、競争が激しかった時期に競争に勝ち残り、今でも新しいバージョンが開発され続けているのは人気がある証拠でしょう。
Baidu IME
Baidu IME(バイドゥ)は中国の大手検索エンジンの会社である百度が提供するIMEです。
Webページの情報などを元にして、変換、予測などを行っているので有名人の名前などの固有名詞にも強いソフトです。
一見これだけ聞くとGoogle日本語入力のパクリのように聞こえますがそういう訳ではありません。
ベータ版が公開された時期はGoogle日本語入力とほぼ同時で、なんとGoogle日本語入力のベータ版公開のわずか2週間後に公開されています。
たぶん、同じ検索エンジンの会社だったので似たような発想があったのでしょう。
Baiduの疑惑
IMEとしては結構優秀なソフトなのですが、Baiduを語る上で避けて通れない問題があります。
2013年にキー入力を外部に送信しているキーロガーのスパイウェア疑惑が持たれ、未だにイマイチ疑いが晴れていないという怪しいソフトでもあります。
事の顛末を軽く説明すると、入力データを外部に送信するのは、データを収集して変換精度を向上させるため、同意したユーザーのみデータ送信する…というの、目的の機能なのですが「送信機能をオフにしても送信され続けた」という問題が起こりました。
公式からの発表はソフトの不具合だったということですが、真偽は定かではなく、その発表も疑問が残るもので怪しいソフトだというのが正直な完走です。
また、他のフリーソフトと共にインストールされる事があり、知らない間にインストールされているということもよくありました。
知らなかった人もBaidu IMEに興味を持ったことと思います(悪い意味で)
フリーソフトをインストールした時に一緒にインストールされていることがあるかもしれませんので、一度確認してみることをオススメします。
今回のまとめ
日本語入力に使うIMEは、最初からインストールされているMS-IMEだけではありません。
Google日本語入力という新しい選択肢もあります。
常に更新されるネット上のデータを利用し
- 高い変換精度
- 予測変換機能
- セキュリティ
- 軽量
と至れり尽くせりなソフトです。
もちろん、今のMS-IMEに満足している人には余計なお世話ですが、もし不満を感じているのなら、一度試してもらいたいソフトです。
そして、Google日本語入力を触ってみたらATOKにも興味が出ちゃうかも…