水冷クーラーは静音対策に効果的なのか?

■水冷機構の基礎知識

パソコンの冷却機構では空冷式が一般的ですが、最近では水冷式も増えてきています。

水冷式は空気よりも熱伝導率の高い液体で熱を移動させる方式です。
水冷についてよく間違った認識がされていますが、熱源に水をかけて冷やしているわけではありません。

あくまで効率よく熱を運ぶ方式で、運んだ熱はヒートシンクやファンを使ったラジエーターで冷却され、最終的には空冷式と同じ機構で放熱します。

空冷よりも効率的で優れている点として、熱源から離れたところにラジエーターを備えて冷却できるため、熱源に直接ヒートシンクをつける空冷式よりも大型の冷却機構をとりつけることができます。

以前主流だった本格的な水冷式では、ケースの外までホースを通して冷却液を運び、ケースの外部に大型のラジエーターを設置する方式がありました。
熱をケースの外まで直接運べるためケース内の温度が上がりにくく、ケースの大きさに左右されない大型のラジエーターを使えるため冷却に余裕ができるという利点があります。

その反面、かなり大掛かりな冷却装置になってしまい、ラジエーターにファンを付ける場合はファンの音が直接ケースの外で響くため空冷より騒音が大きいこともあります。

現在増えてきている水冷は、俗に簡易水冷と呼ばれるタイプで、ケース内で水冷機構が完結するタイプです。

熱源にヒートシンクではなく冷却液のホースを付ける点は水冷と同じですが、簡易水冷ではラジエーターはケース外部ではなく、背面の排気部に取りつける形が一般的です。
排気部にラジエーターを取り付けることで、熱源から運んできた熱を直接ケース外に排気できるため効率的です。

また、水冷構造では、冷却液が気化で徐々に減ってくるため、定期的に補充しなくてはなりません。
簡易水冷ではメンテナンスフリーをセールスポイントにしている製品もあります。

■水冷式は静かなのか?

静音性を考える際に、水冷式は静かなのかという疑問がありますが、空冷式よりも効率的な分だけ、冷却性能に余裕があり静かにしやすいということはいえます。
ただし、結局はラジエーターにファンが必要なため、ファンを無くすような劇的な静音化は無理があります。

簡易水冷ではなく、本格的な水冷で外部にファンがいらないほど巨大なラジエーターを設置できる場合ならばかなり静音化に効果を期待できますが、設置スペースの問題や手間、コストなどかなり敷居が高く、メンテナンスも手間がかかります。

また、大きな熱源を水冷にしても、パソコンの中には他にも熱を発する部分があり、そういった部分は結局はケース内の空気の流れを利用して冷却しなくてはなりません。

外部ラジエーターの水冷クーラーを使っても、ケース内のファンを無くすのは危険なため、完全なファンレス構造は難しく、多少のファンの音は仕方なく、結局は今あるファンをどうやって静かなものに交換するかということを考える方が肝心です。

■水冷対応のケースやマザー

ケースやマザーボードでは、メーカーが水冷対応としている製品があります。
これらの水冷対応は、水冷機構を取り付けやすい機構があるかどうかによります。

ケースの場合の水冷対応は、外部に冷却液用のホースを通す穴があるかどうかで水冷対応が謳われていることが多く、本格的な外部水冷への対応を示しています。
内部で水冷機構が完結する簡易水冷ならば、あまり関係なく、標準的な大きさのケースならば簡易水冷は水冷対応でなくとも取りつけできます。

マザーボードで水冷対応はごく一部のハイエンド製品で、マザーボードのチップに水冷用のホースを取り付けるヘッダが付いていて、マザーボードも一緒に冷却液で冷やすことができます。

マザーボードもCPUやGPUほどでないにしろ、熱源があり、どこかに冷却機構が必要となります。
本来マザーボードはCPUファンの風で熱を溜まるのを防ぐ設計になっていますが、CPUにファンを付けない水冷機構ではうまく冷却できないため、こういった機構があります。

この他、水冷クーラーを付けた時のために、マザーボードのヒートシンクに小さいファンを取り付ける設計になっている製品もあります。

これらの機構を持たないマザーボードでも簡易水冷は取り付けができますが、マザーボード上に熱が溜まっていないかきちんと確認するようにしないとマザーボードの故障に繋がる可能性があります。

こういったマザーボードやHDDを冷却するために水冷機構をとりつけてもケース内の空気の流れは必要なため注意しましょう。

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