電源ユニットの交換方法

■電源の故障と交換について

パソコンの故障原因の中でも、もっとも多く、やっかいな電源の故障についてもう少し掘り下げて説明しましょう。

電源が故障すると、パソコンの電源が入りにくくなるという症状が出てきます、特に寒い季節などは顕著で、電源を入れて時間が立ってからようやくパソコンが起動するということもあります。

負荷が掛かった時に、各パーツに供給する電力が安定せずにパソコンが落ちるという症状もあります。
この場合は、電源の故障だけでなく、電源の容量不足も考えられ、いずれにせよ電源の交換が必要です。

こういった症状は徐々に進行し、最終的には電源が全く入らなくなります。
壊れかけの電源を長く使っていると、他のパーツの負担も大きく、本来故障しにくいCPUやメモリなどのパーツさえ故障させる可能性があります。

他のパーツまで故障すると、故障箇所の診断が難しくなるため、早い段階で修理や交換を考えた方がいいでしょう。

■冷却ファンの故障や埃も問題

故障の原因では、部品の品質によるものもありますが、冷却ファンの劣化や、内部に溜まった埃による異常発熱が原因であることも少なからずあります。

特に埃が原因の場合は、電源の発熱と合わさり発火する可能性もあるのでかなり危険です。

埃が原因の場合は分解したいところですが、電源は分解しにくいパーツなので、隙間からエアダスターで埃を落とすようにしましょう。

不具合が発生したら、無理にそのまま使わず素直に交換したほうが無難です。

■電源規格

デスクトップパソコンの電源ユニットには大きさや端子の数、種類でいくつかの規格に分かれ、

・ATX電源
・SFX電源
・TFX電源
・EPS電源

という種類が主に使用されています。

もっとも一般的なのがATX電源です。
ミドルタワーやミニタワーで使用されており、単品で販売されているのもほとんどがこのATX電源です。
容量は様々で1000Wを越える大容量のものもあります。
価格もピンからキリまであり、品質も同様です。

ATX電源という名前ですが、マザーボードの規格はATX規格に限らず、MicroATXマザーボードでも使用できます。
大きさはどちらかというとマザーボードより、ケースの大きさにより搭載できるかどうか決まります。

ATX電源では、ケースに取り付けるネジ穴の位置や、縦横の大きさが決まっていますが、奥行きは様々で、ケースによっては長い電源は搭載できないこともあります。

ATX電源にはいくつかの世代がありますが、現在はATX12V Ver2.xという世代になっています。
Core2Duo以後はこの電源を使うようになっており、古い規格の製品は市場から姿を消しています。

次に小型のSFX電源とTFX電源があります。
SFX電源は小型のタワー型で使用されていることが多く、やや小ぶりなATX電源といったサイズです。
MicroATX用と表記されていることもありますが、ATXとの互換性もあります。
市場でもそれなりに数があり、入手性は問題ないでしょう。

TFX電源はスリムタワーで使われることの多い電源で、基本的にはスリムケースの付属品といった印象ですが、単体でも販売されています。
ただし、価格はATX電源やTFX電源よりも割高で数も少なく、あまり単品販売は見かけない大きさです。

反対に大容量規格で、サーバー向けのEPS電源があります。
現在パーツ単体で流通しているEPS電源は、ATXと両対応の製品が多く、ATX電源として使える製品が多くあります。
逆に高級なATX電源はEPS電源にも対応していることもあり、サーバー用マザーボードで使用することも可能です。

■独自規格に要注意

メーカー製のパソコンだと独自規格や独自仕様の電源もたまに見かけます。
一般的な電源より端子が少なかったり、ネジ穴の位置や、コンセントに挿すACケーブルの位置が違ったりということもありえます。

端子が少ない分には、パーツの増設で困ることはあれど交換するのに問題ありませんが、ネジ穴の位置やケーブルの位置が違うのはかなり困り物です。
ケースにネジ穴を空けたり、ケーブルと干渉する部分を削ったりして加工すればATX電源を取り付けられる可能性もありますが、かなり手間がかかり難易度も高くなります。

そういう電源は一見ATX電源のように見えて実は違うということがあるので、あらかじめネジ穴の位置を確認しておくといいでしょう。

■電源の交換手順

ここで、デスクトップパソコンの電源交換手順をご説明しましょう。
基本的には、取り外して元通り交換して付け換えるだけですが、流れを大まかに説明すると

1.パソコンの放電のため、コンセントからケーブルを抜き数分放置する
2.電源ユニットから伸びている端子をすべて外す
3.ケースから電源ユニットを取り外す
4.交換する電源ユニットをケースに取り付ける
5.2で外した端子を元通り接続する

という手順になります。
注意点としては、3と4の手順で電源ユニットを落とさないように気を付けることです。
電源ユニットはケースの上部に取り付けることが多く、作業中に落としてしまうと下のパーツをまとめて壊してしまう可能性があります。
片手で電源ユニットを持ちながら、もう片方の手でネジ留めするような状態になるので、できれば誰か他に人に手を貸して貰った方がいいでしょう。

また、2の手順で外した端子をメモを取るなどしてしっかり覚えておくことも大切です。
かなり端子の数が多いため、5の手順で再び接続する際に取りつけ忘れをすることが多々あり、電源を交換したのにパソコンが動かないという事態はよく耳にします。

手の入りにくい狭い場所に端子があることも多く、なかなか作業は大変です、狭い場所は先の細いラジオペンチなどを使うと多少楽になります。

■電源の接続する端子の種類

電源を交換したのにパソコンが起動しないという人は、以下の端子がちゃんと接続されているか確認しましょう。

・マザーボードの主電源、24ピン
・マザーボードのATX4ピンorEPS8ピン
・補助電源が必要なグラフィックボードの6ピンや8ピン
・HDD、SSD、光学ドライブのSATA電源端子やペリフェラル4ピン端子
・ペリフェラル4ピン端子で動作するファン

まったく電源が入らない場合は、主電源の24ピン端子か、CPU近くの「田」の字のような形をしたATX4ピン、もしくは「田」が二つ繋がったEPS8ピン端子の接続忘れが原因です。

画面が映らない場合や、グラフィックボードのパワー不足と表示される場合はグラフィックボードの補助電源が刺さっていません。
ドライブ類が認識されていなかったり、ファンが動いていない場合はそれらにケーブルが刺さっているか確認です。

注意点としては、EPS8ピンとグラフィックボードの補助電源の8ピン端子は形が似ているので間違えないように注意です。
形が違うのですが、無理やり押し込めば入ってしまうこともあり、ここを間違えてマザーボードやグラフィックボードを壊してしまう例も過去何件かありました。

マザーボードの主電源用の24ピン端子は、旧規格のATXマザーでも使えるように、20ピンと4ピンが分かれるようになっている製品もありますが、きちんと24ピン全部接続するようにしましょう。

この他、ハイエンドマザーでは、マザーボードにペリフェラル4ピンを接続できる製品もあります、これはグラフィックボードへマザーボードから供給する電圧を安定させるためのもので、本来必要ありませんが、消費電力の高いグラフィックボードを取り付けるなら刺しておいてもいいでしょう。

■ケーブルの配線を整理する

交換手順は以上で終了ですが、最後に電源からでているケーブルを整えておくことをオススメします。
電源から多くのケーブルが出ており、そのまま放っておくと、ケーブルをファンに巻き込んだりして故障の危険がありますし、ケース内の空気の流れを阻害することなります。

余ったケーブルは結束バンドなどでまとめておき、ベイの横や空いているベイに入れておくなど邪魔にならないように工夫しましょう。

きちんとまとめて置くだけでも排熱効率がよくなり、5分の手までパソコンの寿命が1年延びるとまでいわれています。

使わないケーブルは取り外しておけるプラグイン電源などもあるため、そういった電源を使うのもケーブル整理に役に立つでしょう。

電源の交換は、手順どおりに交換し、正常起動を確認してから、ケーブルを整理する。
これが正しい電源交換手順です。

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